オユ10車内作業の実演講座

オユ102565の車内では、ご見学のお客様に、輸送当時の様子をご理解いただけるように、模擬郵便物と郵袋を使用して、区分棚などの設備使用方法がわかるような展示をしています。また、会員スタッフによる一般公開イベント開催日は、作業実演をしていますが、輸送当時の各種資料を参考に、作業マニュアルを作成して、それに基づいた実演をリアルに行い、ご見学のお客様からご希望があれば体験していただきました。

作業は、大阪鉄道郵便局の担当路線であった、大阪青森線の「阪青上二号便」、敦賀大阪間を想定しており、沿線受渡局だけでなく、米原、京都、大阪の各駅で、他の鉄道便に結束しているほか、航空結束もあるので、区分先の局数が多く、夜行長距離便のため取扱通数も多かったので、区分作業室を埋め尽くすほどの作業を再現しています。

各設備ごとに使用方法(区分口設定)は鉄道郵便局が定めた規程に基づき、マニュアルもそれに即して定められていたので、実演する上で必要なマニュアルを作成しています。なお、下記に示す各マニュアルは、実在したマニュアルを参考にアレンジしていますので、必ずしも実在のものと同一ではありません。

1 結束表と航空結束表

  

すべての乗務員の作業は、郵袋の置き場所から車中で取り扱う郵便物1通ごとの処理まで、各便ごとに制定された結束表に基づいて作業が定められ、各マニュアルも作成されます。特に、他の鉄道便への結束有無は、双方の着発時刻により決まりますので、結束方法も鉄道便ごとに異なります。また、普通通常郵便物のうち、大阪空港から航空輸送される区域宛て郵便物は、航空結束表に基づいて処理されますが、鉄道便ごとの駅到着時刻と航空便時刻との関係で結束の有無も決められているので、鉄道便の結束内容も便ごとに異なります。乗務員は、各便で異なる結束内容を暗記した上で、自分が担務する作業にあたっていました。なお、鉄道のダイヤ改正により、結束表も全便で改正されますし、航空便時刻は改正が頻繁なので(最短2ヶ月)、結束表が改訂される都度、確認をしながら区分処理していました。

2 区分作業室

(1) 開袋台における区分作業

 

通常担務者の立ち位置で、乗務員開披郵袋を開いて開袋台に出します。書留、速達の小郵袋を担務者に手渡したのち、小包類を小包区分棚に回すと、定形普通通常郵便物をひもでくくった束(は束)と、定形外普通郵便物が残ります。このうち、は束は「解束は束(かいそくはそく)」と、「継越は束(つぎこしはそく)」(又は継送は束)に分けます。解束とは、束を解かなければならない、つまり、車内で1通ごとの区分をしなければならないもので、「最近雑」「府県雑」「京都府以西」「◎◎県(要区分範囲)」などと記載されたは束紙が付いているので、これらを選別して区分担務者に手渡します。一方、継越、継送は束というのは、すでに郵便局で宛先局に区分済みであるため、局名が記載されたは束紙が付いたもので、車内ではひもを解くことなく、束のままで大郵袋に納入します。また、定形外郵便物は、そのまま郵袋に納入するため、は束ともども、ここで郵袋掛け、補助区分棚、は束区分棚に投入します。また、区分作業後には束されて戻ってくるので、それらも投入し、取り降ろす駅が近づくと郵袋掛けの郵袋を締め、補助区分棚とは束区分棚の郵便物は空の郵袋に詰めて締めます。

(2) 通常小口区分棚

  

                                                                   府県雑区分及び一次区分 区分棚使用表

 
                                                         二次区分(1回目)
                                                                                                                    二次区分(2回目)

オユ10形式の区分棚は写真のように横25列、縦6段で、区分口は150あります。実演マニュアルでは、青色わくで囲んだ部分(60区分口)で「府県雑、一次区分」、赤色わくの部分で「二次区分」を行います。区分担務者は原則、特に乗務開始駅に至近の各局(最近区域)宛て郵便物を優先して区分する「最近雑区分」をしたあと、列車進行方向に向けて全国宛て郵便物を、郵便番号の上2桁ごとに行う「府県雑区分」と、走行区間の沿線局ごとに行う「受渡区分」を同時に行います。また、一次区分、二次区分という作業手順があり、乗務区間ごとに、各都市の区域内局ごとに細かく区分する「行政区分」、主に他の鉄道便に結束する宛先局の「受渡区分」をまとめて行う二次区分があります。区分担務者は二次区分が必要な郵便物は、おおざっぱに府県ごとに区分しますが、これが一次区分です。二次区分は、写真赤色わくの部分(90区分口)を使って、締切担務者、補助担務者などが担当し、一次区分の区分口から郵便物を抜き取るほか、郵袋から取り出した、二次区分区域宛てのは束もほどいて区分作業を行います。郵便物の数量が多く、二次区分が細かく設定されているため、90の区分口では処理しきれないため、先に京都駅撮り降ろしとなる局を主体とした1回目の作業を行って、すべて取り出しては束したあと、2回目は大阪駅で取り降ろす局宛ての区分作業をします。なお、他の取扱い数量が少ない便や、結束便、航空結束先が少ない便では二次区分の配置を簡略化して、一度の二次区分で済むマニュアルが作られたり、逆に大阪から北陸方向へ向かう下り便では区分口が少なくて済み、二次区分は福井県しかないので、区分担務者1人で全部行う便もありました。さて、二次区分で疑問となりがちなのが、例えば大阪市内各局の区分などしないで、すべて大阪中央局(大阪市)の郵袋差し立てをするときに、全部「53~55大阪市」としては束して納入すればいいのではないか、と思われがちです。確かに、その方が乗務員は楽ですし、車中作業も迅速に進みます。しかし、大阪中央局の中でも、普通通常郵便物の区分、差し立てをする担当課では、大阪市の未処理は束は区分棚で作業しなければなりません。乗務員が車内で局別に区分してから、郵袋に納入しておけば、中央局担当課では、局別に区分されたは束は「継越は束」となり、いきなり各局宛て郵袋に納入して差し立てできるので、区分し直すよりも早く市内各局に輸送でき、列車の大阪駅到着時間によっては、配達日が違ってくる可能性もあります。このような理由から、全国大都市の行政区分を列車内で行うことが行われ、沿線局の業務負担を緩和すると共に、送達を迅速化しています。また、結束便宛ての区域も、細かく二次区分しないで乗務員宛てに差し立てをすると、結束便乗務員の区分作業負担が増えるので、それを軽減するため、なるべく継越は束となるように郵袋に納入します。これらの作業範囲は、鉄道郵便局と沿線局の協議により取り決められていました。

(3) 小郵袋区分棚

  

通常小口区分棚の向かいにある特殊区分棚のうち、向かって左側の間口が広い区分棚が、小郵袋区分棚です。書留郵便物が納入された小郵袋には、宛て先局名が記載されており、局名宛ては、継越小郵袋として、左端から3列の区画で区分したあと、郵便送達証を作成して、大郵袋に納入します。「阪敦乗務員」「京都府以西」と標記されたものは区分小郵袋で、封緘を切断、開披して書留郵便物を取り出し、右側2列の区画で区分したあと、1通ごとに書留番号を送達証に記載して小郵袋に納入して標札を添付して封緘して差し立て、継越小郵袋と併せて大郵袋差し立てをします。

(4) 速達区分棚

  

小郵袋区分棚の右隣りにあり、間口の狭いほうが定形用、広いほうが定形外用です。速達は定形外でも定形と同時に取り扱われ、航空輸送もされたので、両方を同時処理するので、速達担務者は一度に扱います。定形速達は、は束されているか、は束基準の通数(おおむね10通)に満たない場合は、は束されないで、白色小郵袋に納入されています。速達は束も、普通通常は束と同様に、局名が標記されている、継越は束、乗務員名等が標記されている、解束は束に選別し、解束は束をほどいて区分します。継越は束は、定形外速達といっしょに、定形外用区分棚に差し入れます。終了すれば、定形用の郵便物をは束し、速達郵便物のみで差し立てる大郵袋にはそのまま納入し、他の種別の郵便物と共に差し立てる場合には、白色小郵袋に納入した上で、封緘をしないで大郵袋に納入します。

(5) その他の作業

ア.押印台の郵便物消印  駅構内、駅前ポストから回収して乗務員に手渡される郵便物には通信日付印で消印します。

 

イ.小包区分棚  速達小包と普通小包は、この区画で区分して郵袋に納入、差し立てします。

ウ.郵袋送致証作成  便長が締切(継越)郵袋と乗務員差し立て郵袋の記録を取りまとめ、各局宛てに作成、交付します。

  

inserted by FC2 system