東京鉄道郵便局汐留輸送センター跡

2012年9月5日

東京鉄道郵便局の最寄り駅は東京駅です。東京中央郵便局ビルの中にありました。首都にある鉄道郵便局の最寄り駅が日本の代表的な旅客駅になるのは当然ですが、鉄道荷物とともに鉄道郵便が運ばれると考えた場合、代表的な旅客駅でなくても良いと考えられないでしょうか。高度経済成長期には、東京駅とは別の駅が鉄道荷物の始発駅になっていました。郵便物を処理する業務量も東京駅前の本局よりも分室の方が多かったのです。その分室の最寄り駅とはどこでしょうか。
 高度経済成長期以降の鉄道荷物の代表的な駅となると、汐留駅です。東京鉄道郵便局には東陽分室や隅田川分室がありましたが、戦後長らくは汐留分室が代表的でした。
 汐留分室は山手線や東海道新幹線の西側にありました。鉄道荷物が地方への新聞輸送に関わっていたこともあって、汐留分室は鉄道荷物や印刷された新聞を受け付ける施設と並んでいました。第一京浜道路から少し入り込んだところに、汐留駅の鉄道郵便や鉄道荷物を引き受ける場所があったのです。荷物列車への積み込みは、山手線や東海道新幹線をくぐる地下の通路を使いました。
 東京鉄道郵便局汐留分室の開設は1964(昭和39)年で、国鉄が荷物輸送の改善を図っていた時期と重なります。荷物も郵便も旅客輸送の一環でしたが、乗客そのものを輸送する列車との切り離しを進めた結果、汐留駅に荷物と郵便の始発駅が移されたのでした。鉄筋3階建てとなる汐留分室自前の局舎は1965(昭和40)年に完成し、1973(昭和53)年に増築されています。東北新幹線開業に伴う国鉄在来線の輸送体系変化による郵便輸送改編の一環で、1982(昭和57)年11月に汐留分室は汐留輸送センターとなっています。
 東京鉄道郵便局が廃止された翌日の1986(昭和61)年10月1日、東京輸送郵便局が開局しました。汐留駅との通路こそ埋め戻されたものの、既に郵便物輸送の多くは鉄道から順次航空機やトラックに移り変わっていたため、東京輸送郵便局は東京鉄道郵便局の機能と施設の多くを引き継ぎました。開局の当初は総務部門は東京中央郵便局ビルの中にありましたが、翌1987年に汐留に移転しました。東京鉄道郵便局汐留分室の庁舎は、後に東京輸送郵便局の本局の庁舎になったのでした。そして1990(平成2)年8月の新東京郵便局開局により東京輸送郵便局は廃止となりました。
 東京鉄道郵便局汐留分室のために造られたビルは地元の集配郵便局である芝郵便局の分室として使われたこともありますが、汐留地区の土地区画整理事業で姿を消しました。山手線や東海道新幹線の西側も、再開発される汐留駅跡地区への取り付け道路の整備等で土地区画整理事業は必要とされたのです。
 現在では東京鉄道郵便局汐留輸送センターの跡地は公園や街路などに姿を変えています。公園には、鉄道開業当初からあった転車台の礎石が山手線や東海道新幹線の東側から移されてきて記念碑的存在となっていますが、高度経済成長期の鉄道郵便と鉄道荷物の始発駅だった存在を伝えるものは何も見あたりません。局舎は完全に解体され、土地区画整理事業で街区割りと街路の配置も変わったため、どこまでが輸送センター敷地であったのかすら、現地では分かりません。なお、現地写真は2012年6月15日の撮影です。

 

国土地理院webサイト1974年撮影の航空写真「CKT7415-C30-41」より     国土地理院1:10000地形図「新橋」(1990年6月1日発行)より
※当該箇所表示にあたって、最低限の改変を行っています

 

                      局舎跡から東を向いて撮影しました                                                局舎跡から北を向いて撮影しました

                                          北を向いて撮影した写真の地面にある円形の「模様」についての説明書きです

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