鉄道郵便用語集

1 鉄道便、郵便車に関するもの
・扱い便 ⇒ 乗務員が郵便車内で郵袋を開披して在中郵便物を区分した上で郵袋を差立てて前途の駅で取り降ろす鉄道便
 ※ 対語
 ⇒ 護送便、締切便
・貨車締切便 ⇒ 有蓋貨車を契約して主に普通小包を貨物駅相互間で輸送して鉄道便を補助したもの
・コンテナ締切便 ⇒ 国鉄コンテナを契約して速達小包、大型郵袋、普通小包を局相互間で輸送して鉄道便を補助したもの
・合造車 ⇒ 鉄道郵便局では郵便室と他の設備(客車、荷物車)が同一車両に隣接した車両を呼称
・護送便 ⇒ 乗務員が締切郵袋を受渡するのみで車内で開披作業を行わない鉄道便
・締切便 ⇒ 乗務員が乗車せず、駐在員等が締切郵袋を積載して施錠し、前途の指定駅と終着駅で郵袋を取り降ろす鉄道便
 ※類語
 パレット締切便
・重連 ⇒ 同一列車に2両の郵便車が連結されること  ※類語 3両連結されれば「三重連」
・水路便 ⇒ 船舶を用いた輸送便で島しょ地域への輸送のほか、一部種別の郵袋を鉄道に代わって運送
・船舶航走 ⇒ 鉄道連絡船の車両甲板に郵便車を積載する輸送方法で、水路便でなく鉄道便として扱う
・全車 ⇒ 1両すべてが郵便室の郵便車  ※類語 半車 ⇒ 車両の半分が郵便室
・託送便 ⇒ 鉄道郵便線路がない国鉄、私鉄沿線のほか、地方航空路線、バス、その他の運輸機関に、郵袋の荷物運送を委託する輸送便
 ※ 類語
 通常託送(通託) ⇒ 通常郵袋のみを委託する託送便
・直通 ⇒ 同一の郵便車が2以上の郵便線路を通過して運行、2列車以上に連結替えして運行すること
・特発便 ⇒ 所定の鉄道便が運行不能な場合に、別の編成を仕立てて所定時刻又は類似時刻で運行する鉄道便
・代用車(代車) ⇒ 輸送障害や法定検査等で郵便車が運用できない場合に、客車、荷物車など他用途の車両を借り受けて代用される郵便車で、郵便表示、簡易式区分棚や仕切りカーテンを駐在員が設置して、使用期間後は撤去して返却する
・鉄道代行便 ⇒ 長時間復旧しない事故等による輸送障害で鉄道便が運行できない場合に自動車、船舶等他の輸送方法で代行輸送する便
・鉄道補助便 ⇒ 鉄道便の輸送量が多く受渡が輻輳する区間、又は列車ダイヤの制約から輸送上必要な時間帯に鉄道便を設定できない区間等において、鉄道輸送を補助、救済する自動車便
・特例郵便車 ⇒ 東京門司線等の特例輸送に合わせて車内設備を設計した車両で、通常小口区分と小包区分をしないので両区分棚をなくし、郵袋掛け、は束区分棚を増設していた
・荷扱い ⇒ 郵便輸送しない列車に郵便車(多くは郵便荷物合造車)が連結されて小荷物輸送に使用されること
・パレット締切便 ⇒ スユ44形式郵便車(貨車に類似)の車内にパレット(郵袋を積載した車輪付き金属製かご)ごと積載して輸送する締切便で東京門司線のみに設定された


2 鉄道輸送と取扱業務に関するもの
・網内郵袋 ⇒ 乗務員が途中駅で交替する鉄道便に積載する締切郵袋のうち、特定区域宛のみ掛け網で仕切り、交替乗務員ごとの確認照査を省略して最終処理乗務員又は鉄道郵便局に引き渡す郵袋
・受渡区分 ⇒ 乗務員と受渡する沿線局で構成する区分方法
・受渡郵袋用保管箱 ⇒ 駅ホームに設置し、受渡員が勤務上で鉄道便と直接に受渡できない場合に郵袋を入れて施錠し、乗務員が解錠することで郵袋受渡を可能とする保管箱
・駅長代行受渡 ⇒ 受渡局の勤務時間帯と列車着発時間帯が一致しない局にあって、駅長(駅員)に受渡と駅保管、媒介を委託し、局の業務時間に駅と受渡をした方式で、受渡数が郵袋1個程度の駅で行われたが国鉄駅無人化推進に伴って順次廃止された
  ※類語
 夜間代行受渡 ⇒ 夜間に限定して宿直勤務する駅員に委託したもの
・掛け網 ⇒ 
郵袋室内で前記網内郵袋を仕切り、又は包み込む麻製の網で、車両断面に合わせた形状をしており、車内天井には網掛けフックがある
・機械受渡 ⇒ 鉄道便が停まらない駅で機械に郵袋を固定して通過する郵便車に設置の器具でつかみ取らせ、同時に投下された郵袋を網で受け取る方法で、諸外国では普及したが国内では死傷事故の多発で廃止
・逆送 ⇒ 特に定められた結束又は誤処理等の理由で鉄道便から逆方向に戻る鉄道便に郵袋を引き渡すこと
・結束表 ⇒ 鉄道便が駅ごとに郵便物を引き渡す郵便局、結束便等を指示する書面
・結束便 ⇒ 鉄道便から直接、郵袋送致証を作成又は郵袋を差し立てて郵便物を引き渡される他の鉄道便
・航空結束 ⇒ 扱い便が車内で航空郵袋を差し立てて遠隔地に送付する結束で、空港最寄り指定駅で取り降ろす
・最近区域 ⇒ 乗務員が引き受けた郵袋(郵便物)のうち、積込駅からおおむね1時間以内に取り降ろされる区域で、区分方法など引渡し時点で取扱いを他のものと区別される
・最先引渡 ⇒ 鉄道便の結束便宛て郵袋のうち、特に積み替え時間が短いものを車内で取り分け、到着時に最優先で受渡員に手渡すことで、結束表で指定される
・締切
郵袋 郵便車に積載する郵袋で、車内で開き在中郵便物を処理することなく、郵袋のまま運送するもの
 ※ 対語 乗務員開披郵袋
・車中継送区分 ⇒ 扱い便車内で行う区分作業全般を指す
・準備郵袋 ⇒ 扱い便乗務員が車内で差立てるのに必要な郵袋を乗務開始駅鉄道郵便局又は最寄り静止局が取りまとめて納入した郵袋
 ※対語 残郵袋 ⇒ 乗務員が車中で残った郵袋を乗務終了駅鉄道郵便局又は最寄り静止局に返納するために取りまとめて納入した郵袋
・乗務員開披郵袋 ⇒ 引渡を受けた乗務員が車内で開いて在中する郵便物を区分処理しなければならない郵袋
  ※対語 締切郵袋
・静止局 鉄道郵便局が呼称する、沿線郵便局  ※対語 移動局(行動局) ⇒ 静止局から見た鉄道便のこと
・単送指定局 ⇒ 結束表で示される受渡局のうち、通常郵袋と小包郵袋を別々に差立て、かつ、郵袋送致証も個別に作成しなければならない静止局又は鉄道郵便局で、局の規模や取扱い部署の業務上で規定される
・積替郵袋 ⇒ 駅で鉄道便から取り降ろされ他の鉄道便に積載される郵袋
・特例輸送方式 ⇒ 郵便車を荷物専用列車主体に連結した上で受渡駅を集約し、速達化と拠点局中心の輸送体系とすること
・引き継ぎ ⇒ 乗務員が途中駅で交替する鉄道便で、交替前の乗務員(特に便長)が交代後の乗務員に業務を委ねること
・引き継ぎ郵便物(郵袋) ⇒ 前記引き継ぎがなされる郵便物(郵袋)
・便乗 ⇒ 乗務員以外の職員が業務の必要性から手続きを経て郵便車に乗車すること
       又は 乗務員が乗務目的で移動する際に乗務便以外の郵便車や一般列車に乗車すること
・複数受渡 ⇒ 駅に2局以上の静止局が郵便物を搬送して鉄道便と受渡すること
・満載 ⇒ 郵便車内が郵袋でいっぱいになり積載できない状態
・無集配渡し ⇒ 特に定められた無集配の静止局が最寄り駅で扱い便に郵便物を引き渡すこと
・郵便差入口 ⇒ かつて扱い便車両の側面に設置していた差入口(ポスト)で、ホームの旅客が投函できた


3 郵便物、区分等処理に関するもの
・大型 ⇒ 普通定形外郵便物又は当該郵便物のみ納入された郵袋
・区域分配 ⇒ 郵便番号の上二桁による区域宛の郵便物を納入した郵袋を開披して区分すること、大型標札に表示されることが多くあった
・結束 ⇒ 一般に、郵便線路のつながりを示す
・高等信 ⇒ 特に優先して結束便に引渡をしたり航空搭載、通常託送便搭載をされる郵便物の種別を指し、普通定型、速達定形外郵便物のみを指す場合と、速達小包を加える場合があるが多くは前者を指す
・合納 ⇒ 託送便に積載する大郵袋に2個以上の大郵袋を納入する取扱い、委託個数を抑制して荷物運賃を節約する
・誤送 ⇒ 区分等の取扱を誤り、郵袋(郵便物)を誤って引渡すこと(区分作業の誤りは特に「誤区分」)
・差立て ⇒ 郵袋に郵便物を納入して送付、引渡す状態にすること
・荷札 ⇒ 国鉄、私鉄等荷物車、そのた運輸機関に託送する郵袋に添付する札で託送先運輸機関が製作したもの
・は束(はそく) ⇒ 普通定形郵便物が郵袋内で散乱しないように、紙ひもで縛った束
・は束紙(はそくし) ⇒ は束の宛先局を表示する紙片で、区分後に差立てる郵便物に添付して紙ひもで縛る
・早降ろし ⇒ 誤送(誤区分)の一種で、郵袋(郵便物)を取り降ろすべき駅よりも手前の駅で引き渡すこと
 ※対語 持ち越し ⇒ 逆に取り降ろすべき駅で引渡しせずに次駅以遠へ輸送すること
・二けた区分 ⇒ 普通小包、速達小包、大型郵便物、年賀郵便物を都道府県や区域による郵便番号上二けたごとに送付する郵便局(地域区分局)宛てに区分することで、郵袋は指定された分配局宛てに差立てされる


4 乗務、服務に関するもの
・欠食 ⇒ 鉄道郵便局食堂、乗務員事務室の都合で食事が提供できないこと
・欠乗 ⇒ 乗務員の運用上の障害、乗務員個人の傷病等の理由で乗務できないこと
・混合服務 ⇒ 乗務員と駐在員を交互にシフトする服務で、乗務鉄道便数、乗務員数が少ない分局に多い
・三角服務 ⇒ 鉄道郵便局が乗務区間の中間に位置する場合に、鉄道郵便局所在駅で乗務を開始して一方に向かい、次に反対方向に乗務して出発地駅を通り過ぎて他方の行き先地に向かい、再び反対方向に乗務して出発地駅に戻る乗務
・自営会 ⇒ 乗務員の給与の一部を財源として、乗務員事務室職員の雇用と食事代、寝具代等運営費をまかなう組織
・乗務員事務室 ⇒ 行き先地で折り返す際に宿泊、休憩、乗務準備をする施設
・乗務旅費(出張手当) ⇒ 乗務回数と乗務距離に応じて個々に支給される手当
・点呼 ⇒ 出発地鉄道郵便局等で乗務員が乗務開始することを申告し、注意事項等の指示を受けること
・服務 ⇒ 勤務に服すること、特に乗務員は出勤翌日に帰局するものを「二日服務」と称し、同様に三日服務、四日服務がある
・前泊 ⇒ 乗務開始時刻が深夜、早朝であるなどの理由で、自宅から公共交通機関により出勤できない行路において、前日の定められた時刻に出勤して、仮眠又は待機休憩後に乗務すること


5 駐在業務に関するもの
・開函(かいかん) ⇒ 一般的にポストを開いて郵便物を回収すること。鉄道便発車前に駅構内、駅前ポストを開いて回収し、当該鉄道便進行方向の郵便物は郵便局に持ち帰らずに乗務員に引き渡して車内処理する
・滞貨 ⇒ 鉄道事故、労働争議等の輸送障害、輸送量増大などで鉄道郵便局等に郵袋が蓄積して輸送が追いつかないこと
・定数 ⇒ 受渡局、鉄道便ごとに定められた積載郵袋数の上限数値で、車内の容積と乗務員の処理能力から算定することで積載過多と未処理事故を防ぐ(輸送繁忙期や乗務員増員で増加設定可能)
・逓送(逓送員) ⇒ 沿線局と駅とを輸送して受渡する運送会社(運転手)
・テルファー(又はテルハ) ⇒ 郵袋台車を固定してホームから垂直に吊り上げ、異なるホームへ水平移動した上で吊り降ろす搬送設備で、エレベーターが整備できない駅に設置されており、国鉄小荷物との共同利用が多かった
・出来高 ⇒ 大規模な中央郵便局などで、普通小包、速達小包、大型郵袋を差立てる際に鉄道便に直接引き渡さずに鉄道郵便局駐在に引き渡す際の業務で、鉄道郵便局は積載定数を考慮して鉄道便ごとの引渡し郵袋数設定と次便残留等の措置を行う
・販促活動 ⇒ 鉄道郵便局の末期に行われた切手、はがき販売、小包引受けなどの販売促進活動
・輸送センター ⇒ 鉄道便の縮小に伴い、高速自動車便、航空便との郵袋積み替えに特化した業務を行う施設

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